【書評】ピュリツァー賞 受賞写真 全記録
同じく、この本も読んだ(見た)新鮮な感覚を忘れないうちに雑感
- 作者: ハル・ビュエル,ナショナルジオグラフィック,河野純治
- 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
- 発売日: 2011/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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みなとみらいの本屋のケースに飾ってあった瞬間に購入を決断。
報道写真の最高峰と言われる「ピュリツァー賞 受賞写真」のすべてがその事件の解説とともに見れるというのは永久保存版。特に写真をこよなく愛する私としては、ただひたすら何時間でもその写真を眺めているだけでも飽きない。
まず、ピュリツァー賞 で最も有名な写真といえば、1973年、ベトナム戦争でナパーム弾の嵐から逃げ惑う裸の少女を映した写真。
1994年。内戦と飢餓のスーダンにおける、ハゲワシが痩せ細った少女を背後から狙う「ハゲワシと少女」。この写真を撮ったケビン・カーター(南ア)は、世の中の避難を浴びてその後自殺した。
日本人が最初に受賞した作品はこれ。1961年。「舞台上での暗殺」と題された、浅沼社会党委員長の刺殺。長尾靖氏撮影。
それぞれの写真が生み出された社会的な背景とか、写真家の意思、そしてその写真を受け取る我々の意識などを、その時代に生きた人々になったことを想像して色々と考える。
すでに数十年も過去の歴史なのに、衝撃的な現実を目の当たりにすると、言葉を失ってしまう。特に自分が生を受けて、リアルタイムで知っているニュースや事件は心を深く抉るものがある。
凡人の日常には想像すらできない真実がこの世の中には掃いて捨てるほどあるんだろう。ピュリツァー賞に選出された写真は報道写真の数千万枚のうちの一枚だし、第一報道写真としてカメラに残される現実なんて数億分の一の確率だろう。
そもそも、ハゲワシに狙われる少女やナパーム弾から逃げる少女はうちの愚女と何が違うんだ。現実として受け入れるには過酷すぎる現実がファインダーの向こうには広がっていて、それに対して現像されたプリントを見て、どう解釈して行動すれば良いのだろうか。
写真の持つパワーを感じるには十分すぎる一冊である。